ポルトガルの伝統音楽ファドをはじめ、大西洋のクレオール、中南米の民族音楽をルーツに持つシンガー松田美緒。日本の伝統的な歌にじっくり向き合った『クレオール・ニッポン』（2014年）を経て制作された本作『エーラ』は、ギリシャとポルトガルで録音された“原点回帰”と呼ぶにふさわしい作品に仕上がっている。火山で滅びたエーゲ海の島々をモチーフにした「ティラ」、ポルトガル、ブラジル、アフリカの音楽が融合した「望郷のキス」、ポルトガルを代表する作曲家アルマンド・マシャードによるファドの名曲「きまぐれ」、カーボ・ヴェルデに伝わる漁師歌「サイコー」などを収録。穏やかな表情と秘めたる情熱をナチュラルに描き出す歌声は、リスナーの心のなかで、地中海の国々のエキゾチックな風景へと結びつくはずだ。世界的ギタリスト山口亮志のクラシック・ギターをはじめ、トラディショナルな楽器を中心にしたオーガニックな音響も秀逸。（森 朋之）
